ライトノベル マテリアルゴースト レビュー

タイトル マテリアルゴースト
著者 葵せきな
イラスト てぃんくる
出版 富士見ファンタジア
発売日 2006年1月


執筆者:jade 評価:
一見フツーの高校生・式見蛍は交通事故を機に「自分から半径2m範囲内の霊を実体化する」という特殊能力を得る。
その結果、記憶喪失の幽霊娘・ユウに「憑きまとわれ」ることに。
普段はフワフワ浮遊している彼女も、蛍の側では体温&感触のある普通の女の子。
容姿端麗だけど横暴な先輩・真儀瑠紗鳥やクラスメイトの巫女娘・神無鈴音らに囲まれて、蛍の賑やかな日常生活が幕を開ける───
第17回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作。

死にたがりの主人公、記憶喪失の幽霊、唯我独尊を地で行く先輩、焼きもち焼きな巫子と、登場人物は個性派揃い。
…なんだけど、主人公に魅力がないのが致命的ですね。
そのように感じたのはネガティブな思考に感情移入できなかったからではありません。
その価値観にはむしろ共感すら覚えるくらいなんですが、生きる目標もなく、また死ぬ勇気もなく、ただ漠然と生きてる──生きながら 死んでるような──人間に魅力を感じるなんて土台無理な話。
たとえ自らの危険を顧みず、誰かを助けたとしても、そこに“誰かを救う”という明確な意思がなければ、その尊い行為も色褪せるというものです。
設定自体に特に魅力を感じる話ではないだけにキャラの魅力がすべてなんだけどなぁ…

一方、幽霊娘・先輩・巫子といったヒロインたちですが、こちらも現時点では設定だけが一人歩きして中身が伴っていない印象。
ただ、これらに関しては巻を重ねていけば馴染んでくると思われるのでさしあたり問題ないでしょう。
しかしながら、主人公の性格に関しては別。
更正させれば個性が埋没するし、かといって現状維持では人間的な魅力に欠けるし、手の施しようがないように思えます。
ヒロインたちがなかなか個性的なので、巻を追えばそれなりに読めるレベル(惰性で買い続けられるレベル)には達するでしょうが、それ以上となると極めて難しいかなと思います。

新人という点を差し引いても文章力は十分及第点を与えられるレベルだし、アイデアもなかなか面白いものを持っているので、個人的にはこのシリーズの続刊ではなく、新シリーズで勝負してもらいたいと思います。


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